原理

体の外側を覆っている角質層(すなわち肌)は、皮膜によって覆われており、外部からの雑菌やアレルゲンが侵入する事を防御しています。外的要因あるいは内的要因によって皮膜が厚くなったりあるいは薄くなったりする事で皮膚病が生じるメカニズムが説明できます。
 
人と犬の皮膚の違いはこちらを参考にしてください。

①乾性脂漏症

 
被膜が薄くなるタイプは乾性脂漏症と呼びます。乾いたフケが出るのが特徴です。
 
熱による刺激。床暖房、こたつなどは乾燥を助長させます。また薬品による刺激。不適切なシャンプーも乾燥を助長させます。外部からの雑菌やアレルゲンの侵入をゆするため、皮膚への刺激になり痒みが生じます。
 
この乾性脂漏症の治療は、シャンプーやセラミドの補給によって皮膚の水分を適切な状態に戻す事が必要です。

②油性脂漏症

皮膜が厚くなるタイプを、油性脂漏症と呼びます。原因としては、脂の多い食事、遺伝的要因、生活環境などが考えられます。皮膜が厚くなると、酸化によって過酸化脂質に変性しpHが酸性に傾きます。マラセチア菌はpH4.5で増殖が最適化されるため、マラセチア菌の増殖を生み激しい痒みの原因になります。
 
この油性脂漏症の治療には、アルカリ温浴療法が最適です。皮膚をアルカリ化する事でマラセチア菌などの真菌類を死滅させ、合わせて温浴によって余分な脂肪分を取り除きます。

③複合型脂漏症

①と②が複合しているタイプも多く見られます。フケも出ているし、皮膚が脂っぽいタイプの皮膚病です。
 
このタイプは、安易に薬用シャンプーとしてノルバサンシャンプーやマラセブシャンプーなどを使うと、皮膚症状が悪化する事が多く、注意が必要です。

手順および費用

まずは肌タイプの診断、他の疾患の有無の確認から行います。食事内容、予防習慣、スキンケアの度合いなども合わせてヒアリングします。

①アルカリ温浴療法

処方された薬液を使用し、自宅で温浴をする方法が中心です。薬液の費用は体重にもよりますが、1回わずか200円~500円です。週2回程度の温浴から開始します。

②セラミド療法

処方された薬用シャンプーを用いて、自宅でシャンプーする事が中心です。おおよそ体重1kgあたり100円を目安としてください。週1回のシャンプー療法から開始します。症状に応じて、内服薬も処方した場合は別途費用が発生します。
 
アルカリ温浴療法およびセラミド療法ともに、当院のトリミングサロンにて行うことも可能です。

治療

アルカリ温浴療法

①ドックバスやベビーバスに30度から35度程度のお湯をはり、アルカリ化剤を混ぜます。おおよそお湯100リットルに対して20mlが目安になります。②お湯の中に約10分、静かに温浴させます。あまり熱い温度にすると、熱中症になる事があるので、出来る限り低めの温度で始めてください。ゆっくりとマッサージをして被毛の間にお湯をなじませると効果的です。③お湯からあがったら、十分にお湯で洗い流してください。④タオル3枚を使ったタオルドライが基本です。ドライヤーの熱により縮毛が進行するので使わないでください。

効果およびリスク

基礎疾患の有無にもよりますが、アルカリ温浴およびセラミド療法ともに1~2週間で効果が出てきます。

関連疾患

食物アレルギーノミアレルギー性皮膚炎アトピー性皮膚炎