要約

発作は脳の異常な電気的な放電によって起こる一時的な脳の病気で、体や足が痙攣し、口から泡を吹くこともあります。その頻度は様々で、半年に一回程度の子もいれば、一日に何回も発作を起こす場合もあります。発作に発作が重なり強い痙攣が長時間続くと死に至るケースもあります。また、発作が全ててんかんではありません、発作は脳腫瘍をはじめ様々な脳疾患で起きます。

一般的に初めての発作が5歳未満であれば真のてんかんの可能性が高く、高齢になって初めての発作は脳腫瘍などが疑われます。その鑑別診断には検査センターでのMRI検査が必要であり、画像上脳に異常がなければ、真のてんかんと診断されます。

半年に一回程度なら無治療の場合もありますが、発作が頻回の場合は投薬によって症状を抑えます。発作の予想は通常困難であり、常日頃から発作を抑える薬を飲ませる必要があります

原因

大脳の神経細胞の異常興奮によって引き起こされる症状が、繰り返し起こります。その原因は以下の2つに大別する事が出来ます。

特発性てんかん
(原発性、真性、本態性)
脳内に炎症や腫瘍がない
遺伝的な要素が考えられる
犬に多い
症候性てんかん
(二次性、続発性、反応性)
脳内に異常がある
(外傷、炎症、腫瘍、奇形など)
猫に多い

症状

症状は、神経細胞の興奮の範囲や程度によって変わるため様々です。下にまとめました。

全般発作 強直間代性発作
(大発作)
初めに硬直性痙攣(10秒程度、ガタガタ震える)を起こし、次に間代性痙攣(数10秒から数分にかけて犬かきをする)を起こす。
意識は無く、瞳孔が開き、失禁したり、泡を吹く事があります。
欠伸発作
(小発作)
突然意識だけ無くなる。犬猫ではあまり見られない
ミオクロニー発作 ワイヤーヘアード・ミニチュア・ダックスにおいて原因遺伝子が発見された。
全身の筋肉がブルブルする発作
焦点発作
部分発作
(局在関連発作)
単純部分発作
複雑部分発作
顔面麻痺、咀嚼運動、ハエ咬み行動などが見られる

治療

特発性てんかんの場合

特発性てんかんの場合、フェノバール、臭化カリウムなどの抗てんかん薬による治療が一般的です。長期にわたって投与する事が必要な場合が多いです。長期に渡って投与した場合は、肝臓などに副作用が生じる場合があるので、定期的な検査が必要になります。

以下のような場合は、積極的な治療が必要になります

①3か月に2回以上、発作がある②1年間に2回以上、群発発作がある③重積発作がある④発作後期の症状が重度である⑤症候性てんかんである

フェノバール(フェノバルビタール)

てんかんの管理および精神安定剤として用いられる長期作動型のバルビツレートです。以前はてんかんの第一選択薬として広く用いられていましたが、肝障害などの副作用が認められるため新しい薬に変わってきています。

エクセミド(ゾニサミド)

フェノバールの後に登場した抗てんかん薬です。動物専用の薬品も多く製造されています。

ゾニサミドは、脳内神経伝達部位に作用し、Naチャネル及び低濃度作働性Caチャネルを阻害することにより、神経細胞の興奮を抑制して抗てんかん作用を発揮する化合物です。副作用もフェノバールに比べると少ない印象を受けます。

エピレス錠(共立製薬)
コンセーブ(DSファーマ)

臭化カリウム

抗痙攣作用から古くから使われている薬ですが、一般的にはフェノバールやエクセミドと併用して使われることが多いです。副作用も少ないお薬です。

ガバペンチン

単剤使用で使うことは少ないく、特に犬において補助的に使うことが多いです。副作用も軽微です。肝臓で解毒されないため肝障害がある犬にも使います。

ガバペンチンは、抗てんかん薬として用いられる他にも、椎間板ヘルニアや脊髄空洞症などの神経性の疼痛コントロールにもよく用いられます。

レベチタセタム(イーケプラ)

2010年に日本で販売された比較的新しい抗てんかん薬です。従来の抗てんかん薬の作用機序とは異なり、てんかんを根治的に治療できる可能性があります。

ただし、1日3回の投薬が必要な事、投薬後半年程度で、薬剤耐性によって発作頻度が上昇する、ハネムーン効果がある事などから第一選択として使うことは少ないです。

症候性てんかんの場合

症候性のてんかんの場合は、その治療が必要になります。それぞれのリンクを参考にしてください。

水頭症
脳炎

予防

てんかん自体は予防できませんが、心電図や血液検査など定期的な健康診断で、脳以外の発作を引き起こす可能性のある病気の、早期発見をする事が大切です。

関連疾患

水頭症脳炎

好発犬種

特発性てんかん

ビーグル、シェルティー、ラブラドール、ゴールデンなど