原因

腎不全は正確には病気の名前ではなく、腎臓の機能が25%未満に低下した状態を表します。

急性腎不全

腎臓の働きである、血液中の不必要な物質をろ過する作用が、急激に低下したものが急性腎不全です。その原因は下の3つに分類されます。

腎前性急性腎不全 脱水や血圧の低下によって、腎臓(糸球体)への血流が減少する
腎性急性腎不全 腎毒性物質、感染症、DIC等によって、腎臓(ネフロン)が障害させる事で生じる
腎後性急性腎不全 尿路閉塞や尿路損傷によって、尿が体内に漏れる事で生じる

慢性腎不全

犬では、急性腎不全から移行したり、糸球体腎炎やアミロイドーシスから起こったりする事が多く見られます。
 
猫でも、急性腎不全から移行、膀胱炎、尿石症、腎盂腎炎から2次的に起こる場合もありますが、多くの場合は、加齢に伴う腎機能低下から起こる事が多く見られます。

症状

ステージ クレアチニン濃度
残存腎機能割合
症状
第Ⅰ期 犬 ~1.4
猫 ~1.6~33%以下
明らかな症状なし
尿量、尿比重ともに正常
第Ⅱ期 犬 1.4~2.0
猫 1.6~2.833~25%
軽度の食欲不振、貧血
多尿、尿比重の低下
第Ⅲ期 犬 2.1~5.0
猫 2.9~5.025~10%
食欲低下、体重減少、貧血、脱水
多尿あるいは乏尿、尿比重の低下
第Ⅳ期 犬 5.0以上
猫 5.0以上10%以下
尿毒症の症状
乏尿、無尿、尿比重の低下

治療

腎臓内の変化は、不可逆性の変化が多く、通常の治療で元に戻る事は多くないです。慢性腎不全の場合、以下の項目が基本となります。
 
内科的治療①高血圧の補正
ACE阻害薬が広く用いられています、Ca拮抗薬を併用する場合もあります。
②皮下補液③食事療法(タンパク、リンの制限など)④貧血の改善

ステージ 内科的治療 その他の治療
第Ⅰ期 ACE阻害薬
(Ca拮抗薬)
皮下補液 週に2~3回程度
食事療法
第Ⅱ期 皮下補液 週に3回以上
食事療法
サプリメント
第Ⅲ期 ACE阻害薬
(Ca拮抗薬)
(エポジン)
(制吐剤)
猫:ラプロス
皮下補液 毎日
食事療法
サプリメント
第Ⅳ期 皮下補液 1日2回程度
食事療法
サプリメント

予防

効果的な予防方法はありません。早期発見と早期の治療開始が重要です。

関連疾患

高血圧症、心不全

好発犬種

猫、犬共に8歳以上の高齢の猫にみられることが多いです。