原因
体内で血液を送り出すポンプの役割を行っている心臓内で弁の役割をする僧帽弁が、おもに老化によって粘液変性を起こし、閉鎖不全を起こす。これにより左心室から左心房への血液の逆流が起こり、左心系の血液のうっ帯が起こる事によって様々な症状を引き起こします。
症状および診断
各種検査
聴診 | 安易かつ音声による診断 |
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心電図・血圧 | 臨床的な検査 |
レントゲン検査 | 心臓、血管系の視覚的検査 |
超音波検査 | 心臓内部の視覚的検査 |
血液検査 | 心臓への負担の定量検査 |
本院ではデジタルレントゲン・ドップラー血圧計・心電図・カラードップラー超音波を用いて心臓の内部構造を確認し、各種循環器疾患を鑑別して治療を進めていきます。
グレード分類および症状
心機能分類 | 症状 |
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グレード1 (発症初期) |
なんとなく元気がない 寝ている時間が増えた 疲れやすくなった |
グレード2 (軽度) |
散歩に行きたがらない 食欲が落ちた 運動後、発咳や呼吸不調 |
グレード3 (中程度) |
常に発咳、呼吸が苦しい 動く事を嫌がる |
グレード4 (重度) |
腹水、失神 殆ど動こうとしない |
治療
内科的な治療が一般的です。
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)が中心になりますが、症状に応じて利尿剤、血管拡張剤、強心剤、気管支拡張剤を併用します。
予防
遺伝的な要因も指摘されており、効果的な予防方法は確立されていません。
早期発見、早期治療が重要です。食欲がない、元気がない、散歩に行きたがらない、疲れやすいなどの症状が見られたら早めに受診する事をお勧めいたします。特に8才を境にリスクが高まるとの報告もありますので、高齢になったら定期健診を受ける事をお勧めいたします。
関連疾患
肺水腫
好発犬種
若年齢で発症
キャバリア
中年齢で発症
マルチーズ、チワワ、パピヨン、ミニチュア・ダックス、ヨーキー、ポメラニアン、トイ・プードル
よくあるご質問
- 日常気を付ける事はありますか?
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①激しい運動は控える。通常の散歩ならOKです。ドックランに行って走り回るなどは厳禁です。
②療法食を主体として給仕しましょう。おやつは塩分の多いものが多いです。たとえ動物用のおやつでもお控えてください。逆に野菜はお勧めしています。
③急激な変化を避ける気温の変化、気圧の変化など環境の急激な変化は心臓に負担がかかります。 - この病気が進行するとどうなりますか?
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この病気はたとえ手術をしたとしても治るものではありません。一般的には内服薬で進行と症状を抑えていくものになります。死に至るパターンはいくつかあります。
①突然死何かをきっかけに急に症状が悪化し、数日あるいは数時間でなくなるケースです。人間の心筋梗塞と同様でなすすべがないのが実情です。
②食欲低下何をしても食べなくなってしまうケースです。食欲がなくなるため薬を投与できなくなる。そのため症状がさらに悪化し悪循環を起こし死に至るケースです。
③腹水、胸水が貯留病態が進行し右室不全を併発する場合は、腹水や胸水、肝腫大を引き起こすことが見られます。あまり水が溜まると、呼吸がしにくくなるため定期的に水を抜く必要があります。