【原因】

肝炎は、感染性と非感染性の2つに大別されます。

感染性の肝炎として代表的なのは、犬アデノウイルス1型に感染することで発症する、犬伝染性肝炎です。ウイルスは感染犬の分泌物(涙や鼻水、唾液尿、便など)のすべてに含まれ、これらを舐めたり、汚染された食器を使用することで感染します。ウイルスは外部環境での抵抗力が強いため、室温でも一定期間は感染性を保ちます。したがって回復した犬の尿中に少なくとも6から9ヵ月排泄され、ほかの犬への感染源となります。

一方、非感染性は遺伝性のものが多いです。 例えば、ウェストハイランドホワイトテリアでは、銅蓄積病と呼ばれる、銅が肝臓にたまることで慢性の肝炎が高い確率で起こります。ドーベルマンでは原因不明の慢性肝炎と肝硬変がみられ、さらにアメリカンおよびイングリッシュコッカースパニエルでも原因不明の慢性肝炎が見られます。

【症状】

犬伝染性肝炎にかかると、肝臓に炎症が起こり、食欲不振、嘔吐、発熱などの症状が現れます。ワクチン未接種の犬、とりわけ子犬が感染した場合は、死亡するケースが多く見られます。

犬の非感染性の肝炎は人間と同じように初期の症状ははっきりしたものではなく、元気がない、食欲がない、慢性嘔吐、多飲多尿といったものがあります。進行すると黄疸、腹水、血液凝固障害、肝性脳症といった、明らかな肝不全の症状となります。

【治療】

犬伝染性肝炎の有効な治療薬はなく、点滴や輸血、食事療法といった支持療法をおこないます。

一般的に急性肝炎では、安静、点滴による水分・ミネラル補充、肝臓の栄養剤、抗酸化作用のあるビタミンC・Eの投与などが行われます。また細菌による二次感染を防ぐため抗生剤の投与が行われる事もあります。

慢性肝炎では、銅の過剰蓄積が原因の場合、銅を除去する薬剤や低銅食の食事療法が推奨されます。免疫介在性が疑われる場合、ステロイドやシクロスポリンなどの免疫抑制剤が使用されることがあります。

【予防】

犬伝染性肝炎の予防には、ワクチンが有効です。子犬を飼い始めたらすぐにワクチンの接種時期や回数について確認しましょう。また、成犬や老犬になってからも、年に1度のワクチン接種を行いましょう。

犬や猫が有害物質(人用の薬品、農薬、特定の植物など)を摂取しないよう注意し、適切な食事管理を行うことも肝炎の予防につながります。

先天性の肝炎は、症状が分かりにくいですが、若いときから起こるので好発犬種では早くから定期健康診断を行っておいた方がよいでしょう。

【関連疾患】

肝炎は、胆嚢粘液嚢腫や肝硬変、胆泥症などの肝胆道系疾患と関連することがあります。これらの疾患は、肝炎の進行や合併症として発生する可能性があるため、注意が必要です。

【好発犬種・猫種】

ウェストハイランドホワイトテリア、ドーベルマン、コッカースパニエル

猫においても肝炎は発生しますが、特定の好発品種は明確に特定されていません。