【原因】

脂漏症は、皮膚の新陳代謝や皮脂分泌の異常により、皮膚が乾燥してフケが増える「乾性脂漏症」と、皮脂が過剰に分泌され皮膚がべたつく「油性脂漏症」に分類されます。原因は多岐にわたり、遺伝的要因、内分泌疾患、アレルギー、寄生虫感染、栄養の偏りなどが挙げられます。特に犬では、原発性(遺伝性)脂漏症と続発性(他の疾患に伴う)脂漏症に分類され、前者は特定の犬種で若齢時から発症し、後者は中高齢で他の疾患に伴って発症することが多いです。

【症状】

共通して、かゆみ、脱毛、紅斑、かさぶたなどが生じ、重症化すると皮膚の色素沈着や苔癬化が進行します。犬の場合、趾間、会陰、顔面、腋窩、頚背部、腹部などで症状が顕著になる傾向があります。

① 乾性脂漏症

皮膚に、サラっとした鱗屑が出来ます。脱毛は軽度ですが、被毛は乾燥してつやが失われます。

② 油性脂漏症

尾根部など皮脂腺が発達した皮膚に、鱗屑が出来ます。皮膚を触るとベタっとした油肌で、異臭を伴う事が多く見られます。酵母菌の一種であるマラセチア菌がこの皮脂を栄養としているため、非常増殖する原因にもなります。

【治療】

原因疾患がある場合はその治療が優先されます。一般的な脂漏症の管理として、薬用シャンプーによる薬浴が有効で、皮脂やフケの除去、皮膚の清潔維持を目的とします。シャンプーの種類や頻度は症状により異なり、獣医師の指導のもと適切に行うことが重要です。また、食事管理も大切で、栄養バランスの取れた食事を与えることで皮膚の健康をサポートします。必要に応じて、抗生剤や抗真菌剤の投与が行われることもあります。

コッカースパニエル、ウエスティー、バゼット・ハウンド などは遺伝的な素因を持っているため、若い年齢で原発的(一時的)脂漏症の発症が多く見られます。一方、他の疾患から二次的脂漏症を発症する事もあり、その場合は、原発の病気を治療する事が必要になります。

原発性脂漏症の治療としては、シャンプーによって過剰に形成された角質や皮脂を取り除き、栄養状態を整え、セラミド剤をはじめとした保湿剤で適度な潤いを与えることです。

二次的な脂漏症の原因は多岐にわたり、主に皮脂腺の機能異常や皮膚の角質代謝異常によって発症します。特に次の4つの因子が関与することが多いとされています。

内分泌異常
ホルモンは皮脂の分泌に強く関与しており、たとえばエストロゲンや副腎皮質ホルモンは皮脂の分泌を抑制する働きがある一方で、アンドロゲンや甲状腺ホルモンは分泌を促進します。そのため、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)や甲状腺機能低下症といった内分泌疾患が背景にある場合は、それらの原疾患の治療が不可欠です。

栄養バランスの乱れ
タンパク質、亜鉛、ビタミンAが欠乏すると、皮膚の角化異常や乾燥、過剰な皮脂分泌を招くため、脂漏症のリスクが高まります。また、食事中の脂肪酸の質や量も皮膚の健康に大きく影響します。栄養補助や処方食による食事療法が重要となることもあります。

アレルギー疾患
アトピー性皮膚炎や食物アレルギーは、最も一般的な脂漏症の基礎疾患のひとつです。慢性的な炎症によって皮膚のバリアが崩れ、脂漏傾向が強くなります。根本的なアレルギーの診断と治療が必要です。

寄生虫・真菌感染
疥癬、毛包虫(ニキビダニ)、ツメダニなどの寄生虫、またマラセチアや皮膚糸状菌などの真菌感染によっても、二次的に脂漏症が引き起こされます。これらの感染症の適切な診断と駆除治療が重要です。

【予防】

日頃から皮膚を清潔に保つための適切なシャンプーやブラッシング、栄養バランスの整った食事が重要です。早期発見・早期治療が慢性化を防ぐ鍵となるため、定期的な健康チェックを心掛けましょう。​また、一回炎症が起こると、痒くて掻いたりして、新たな炎症を生む負のサイクルをする事があるので、早期発見、早期治療が大切です。

【関連疾患】

脂漏症は他の皮膚疾患や内分泌疾患と関連して発症することが多く、例えばアトピー性皮膚炎、甲状腺機能低下症、クッシング症候群などが挙げられます。これらの疾患の管理が脂漏症の改善にも繋がります。

アトピー性皮膚炎疥癬毛包虫

【好発犬種】

原発性脂漏症では、アメリカン・コッカー・スパニエル、シー・ズー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、バセット・ハウンド、ジャーマン・シェパード、チャイニーズ・シャーペイ、ラブラドール・レトリバー、ミニチュア・ダックスフンドなどが挙げられます。これらの犬種では、遺伝的要因により脂漏症を発症しやすい傾向があります。