【原因】

犬や猫の消化管に炎症が生じる疾患で、急性と慢性に分類されます。

急性胃炎は、胃粘膜に急激な炎症が起こることで発症します。その原因は多岐にわたり、最も一般的なのは拾い食いや誤食によるものです。ゴミ箱の中にある腐敗した食べ物、家の中の布類(タオルや靴下)、道端に落ちている腐った草や残飯などを口にすることで、胃に刺激が加わり、嘔吐や胃痛を引き起こします。また、食べ過ぎ極端な空腹も胃酸の過剰分泌を誘発し、胃粘膜を傷つける原因になります。

さらに、異物の誤飲(石、木片、プラスチック、ビニール袋など)による機械的刺激や、農薬や洗剤などの化学物質の摂取も重篤な胃炎を引き起こす要因です。また、ステロイド剤やNSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)などの内服薬も、副作用として胃粘膜障害を起こすことが知られています。

加えて、環境の変化や飼い主との分離などによる精神的ストレスも、胃酸分泌や自律神経系に影響を与え、急性胃炎を誘発することがあります。特に神経質な性格の動物では、ストレス要因に反応しやすいため注意が必要です。原因の除去とともに、適切な診断と早期対応が大切です。

慢性胃炎の原因はよく分からないが、急性胃炎と同じように、食物抗原、薬剤、病原体などに繰り返し影響を受け、慢性的に胃に負担がかかり起こることもある。また腸内細菌のバランスの乱れ、寄生虫感染、アレルギー反応、ストレス、内分泌疾患など、多岐にわたる要因が関与しています。また、ウイルスや細菌感染も原因となり得ます。

【症状】

嘔吐、下痢、食欲不振、元気消失、体重減少などが見られます。特に急性の場合、突然の嘔吐や下痢が特徴的です。慢性の場合、これらの症状が数週間以上続くことがあります。また、血便や黒色便が見られることもあり、重篤な状態を示唆する場合があります。異物を飲み込んでいたとしても異物の大きさによっては無症状の場合もあります。

短期間に嘔吐を繰り返すことにより、嘔吐物に血が混じることもあります。脱水や電解質バランスの異常を引き起こし、ぐったりする事もあります。腐敗物を口にした場合、嘔吐と腹痛があり、下痢も起こします。治療をしない場合、膵炎を併発する事もあります。

慢性胃炎は、あまり目立った症状が現れないため、見逃されがちです。食欲不振、体重減少、沈鬱などの症状が見られる事もあります。

【治療】

急性および慢性胃炎は原因によって治療法が異なります。

異物が原因の場合、催吐薬によって吐き出させる事が多いですが、異物が針や鋭利な物の場合、異物によって消化管を傷付け恐れがあるので開腹手術や内視鏡で取りだす場合もあります。猫の場合、毛玉が原因になる事が多いので、毛玉ケアが重要です。

ストレスが原因であれば、ストレス要因を取り除く事が必要です。また空腹もストレス要因になり得るので、早食いのペットの場合は、食事量が足りてなく飢えていないか注意が必要です。猫の場合はストレス要因が最も多いです。

感染症が原因なら、その治療を行います。食事の制限や制吐剤、粘膜保護剤は有用です。特に近年、強力な制吐剤が認可使用されています。寄生虫感染が原因の場合は駆虫薬を使用します

【予防】

特に子犬、子猫の場合、異物の飲み込みを注意する事が大切です。食事を与える時間やフードの質や量を安定させる事も大切です。また、おやつ類や人間の食べている物を与える事も管理する必要があります。​急なペットフードの変更やアレルギーのある物を与える事は避けるべきです。また、ゴミ箱や道端の食べ物を摂取しないよう注意し、定期的な寄生虫の駆除も効果的です。さらに、ストレスの軽減や適切な運動も予防に寄与します。

【関連疾患】

胃腸炎を放置した場合、胃捻転、出血性胃腸炎や膵炎を併発する事があるので注意が必要です。また、炎症性腸疾患(IBD)やリンパ腫や消化管内腫瘍などの重篤な病気が隠れていることもあります。これらの多くは血液検査や超音波検査で診断する事が可能です。

膵炎、胃捻転

【好発犬種】

犬全般で見られます。特に子犬の場合は病状が悪化しやすい傾向にあります。