【原因】
眼瞼内反症(逆さまつげ)は、まぶたの縁が内側に巻き込まれ、まつげが角膜や結膜に接触してしまう状態を指します。原因は大きく分けて先天性と後天性に分類されます。先天性のものは、まぶたの構造異常や顔面骨格の発育不全などが関係しており、特に短頭種(シーズー、パグ、ペキニーズなど)に多く見られます。
一方、後天性の原因としては、慢性の結膜炎や外傷、皮膚のたるみ、加齢による皮膚の弛緩などが挙げられます。また、まぶた周囲の筋肉の異常収縮や神経障害によっても内反を引き起こすことがあります。涙やけや目ヤニが多い個体では、常に眼周囲が湿っているため皮膚が柔らかくなり、内反が助長されることもあります。
【症状】
眼瞼内反症では、まつげや皮膚が角膜に触れることで眼の表面が継続的に刺激され、痛みや違和感を訴えるようになります。具体的な症状としては、目を細める(瞬目)、涙の量の増加(流涙)、目ヤニの増加、目の充血、結膜の腫れ(結膜充血・浮腫)、角膜の混濁、角膜潰瘍などが挙げられます。慢性的な刺激が続くと、角膜が傷つき視力低下や失明に至る危険性もあります。動物ではしきりに目をこする、顔を壁や床に擦りつける行動が見られることがあります。まぶた全体が内反しているケースもあれば、内眼角や外眼角のみの局所的な内反もあり、重症度は個体差があります。
【治療】
軽度の眼瞼内反症(逆さまつげ)の場合、刺激しているまつ毛を定期的に抜く事で治療します。結膜炎や角膜に傷が付いている場合は、点眼薬などで治療をします。まれにアレルギーなどによって眼を掻く事で眼瞼が内反する場合は、アレルギーの治療を行う事もあります。
ただし、根本的な治療には外科的矯正が必要なことが多く、当院では、痛みの少ない麻酔下でのレーザーによる治療も行っています。
レーザー治療 20,000円 (手術費用として)
【予防】
先天性による疾患がほとんどの為、効果的な予防はありません。日常的に目の状態をチェックし、涙やけ・目ヤニ・充血・こすり癖などの異常が見られた場合は速やかに検査することが大切です。
【関連疾患】
眼瞼内反症は単独で発症する場合もありますが、他の眼疾患と併発することも少なくありません。特に、角膜潰瘍や角膜炎、ブドウ膜炎、結膜炎といった炎症性疾患とは強い関連があります。慢性的な刺激による角膜の混濁や血管新生が進行すると、治療後も視力の回復が困難になるケースがあります。また食物アレルギーとの関連も注意が必要です。
【好発犬種】
シーズー、パグ、チン、マルチーズ、ブルドッグ、コッカー・スパニエル、トイ・プードル