【原因】
ぶどう膜の構造
眼の中に血液を介して栄養分を補給しています。ぶどう膜はその構造から3つに分類されます。
機能 | 病気 | |
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虹彩 | カメラで言うところの「しぼり」に相当します。 外部の光の強さに応じて、瞳孔の大きさを調整します。 |
前部ぶどう膜炎 (虹彩毛様体炎) |
毛様体 | 眼の栄養源である眼房水を産生します。 この眼房水の圧力によって眼圧が一定に保たれています。 |
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脈絡膜 | 眼の後方の栄養分の供給や老廃物の排泄を行っています。 | 後部ぶどう膜炎 (脈絡膜炎) |
虹彩、毛様体、脈絡膜は連続していて、それぞれの炎症は他に影響し易すく、その場所で前部ぶどう膜炎又は後部ぶどう膜炎と呼ぶ事が多いです。
ブドウ膜炎とは、上記のぶどう膜と総称される組織に炎症が生じる状態です。原因は多岐にわたり、外傷、感染症、免疫介在性、腫瘍、代謝異常、全身性疾患に分類されます。
猫では猫伝染性腹膜炎(FIP)、トキソプラズマ症、猫白血病ウイルス(FeLV)、猫免疫不全ウイルス(FIV)などのウイルス性疾患や原虫感染が関与することが多いです。
犬ではリケッチア症、バベシア症、ブルセラ症などの感染症、あるいは自己免疫性疾患、内臓型リンパ腫などが原因となることがあります。また、白内障や緑内障に続発する場合も少なくありません。明確な原因が特定できない「特発性ぶどう膜炎」も多く報告されています。
【症状】
初期には涙目、羞明(まぶしがる)、目を細める、目やに、虹彩の変色などが見られ、進行すると眼内出血、眼圧低下、縮瞳(瞳孔が小さくなる)、前房の混濁、角膜の浮腫が起こります。ブドウ膜の炎症が進行すると、視力の低下や失明につながることがあり、緊急性の高い病態とされます。眼内に浮遊物が見られる「フレア現象」や、前房内のフィブリン沈着、虹彩の癒着なども確認されることがあります。慢性化すると眼球の萎縮や白内障、続発性緑内障などの合併症を引き起こすことがあります。眼の奥の疾患であるため、外見からは軽く見える場合でも、早期に的確な診断が必要です。
【治療】
治療は原因疾患の特定と同時に、眼内の炎症を抑える対症療法が中心となります。感染性が疑われる場合には抗菌薬や抗ウイルス薬、原虫駆除薬などを使用し、免疫介在性と考えられる場合にはステロイドや免疫抑制剤を用います。ただし、感染性疾患を除外しないままステロイドを投与すると、病態が悪化するリスクがあるため注意が必要です。
【予防】
ブドウ膜炎自体の予防は困難ですが、基礎疾患や誘因となる病気の予防と早期発見が重要です。特に猫ではFIPやFeLV、FIVの予防接種や定期的な健康診断が効果的です。また、犬猫ともに外傷による発症も多いため、目をぶつけないように生活環境を整えることや、他の動物との接触管理も予防につながります。
眼の異常に気づいた場合は早急に動物病院での診察を受け、眼圧検査、眼底検査、エコー検査などを含めた総合的な眼の検査をする事が大切です。