
【原因】
クッシング症候群になる原因は、以下の3つに大別する事が出来ます。
腫瘍 | 下垂体性 PDH |
脳下垂体に、腺腫と呼ばれる良性の腫瘍ができて、過剰に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が分泌される事が原因となります。 犬では一般的です。 |
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副腎性 ATH |
副腎皮質にできた腫瘍が、副腎皮質ホルモンを過剰生成する事が原因。 | |
医原性 | ステロイド剤の過剰投与 |
【症状】
病気の初期では、多飲多尿(水をたくさん飲む、おしっこの量が増える)、食欲亢進などが見られます。進行すると、脱毛やお腹が膨れるなどの症状が現れます。
さらに進行してくると、免疫抑制によって様々な感染症(皮膚炎、膀胱炎など)にもなりやすくなります。糖尿病を併発することがあり、ゆっくりと進行するため老化と誤解されがちです。重度では高血圧や糖尿病の合併症も見られます。
【治療】
クッシング症候群の治療は、トリロスタン(商品名:アドレスタン)やミトタンを使った薬物治療が主となります。以前はトリロスタンの薬価が高かったので治療費が高額になりましたが、動物薬であるアドレスタンが発売された事で薬価が下がりました。
副腎腫瘍が原因の場合は、外科手術や放射線治療が適応になることもありますが、全身麻酔や外科的リスクを伴うため、高齢犬では年齢の割には食欲旺盛になる病気のため内科療法が中心となります。
医原性の場合はステロイドの漸減と中止を行いますが、急な断薬は副腎不全を引き起こすため注意が必要です。治療効果の判定にはACTH刺激試験やLDDS試験などを定期的に行い、内服薬の投薬量を調整していきます。
【予防】
クッシング症候群の予防方法はありません。したがって早期発見・早期治療を心がけることが大切です。気になる症状が見られる際には、動物病院の診察を受けるようにしましょう。ホルモン検査や超音波検査で副腎や肝臓の異常を早期に発見することが重症化の防止に役立ちます。
【関連疾患】
クッシング症候群は、他の内分泌疾患や代謝疾患と関連することがあります。代表的な合併症には、糖尿病、高脂血症、、胆泥症、膵炎、高血圧、肝腫大などがあり、免疫力低下による皮膚感染症や脱毛、細菌感染症にも注意が必要です。慢性的なホルモン異常により、筋肉萎縮や骨の脆弱化(骨粗しょう症)も生じやすく、重症例では肝臓や腎臓にまで悪影響を及ぼすことがあります。血液検査、エコー検査、尿検査などを併用し、全身状態を総合的に管理することが大切です。
【好発犬種】
7歳以上の高齢犬全般(特にダックスフンド、トイ・プードル、ポメラニアンなど)。遺伝的素因や肥満もリスク因子とされています。一方で、猫のクッシング症候群は非常に稀で、糖尿病を併発して発見されるケースが多いです。